今回は映画『ANORA/アノーラ』についてどんな映画なのか?
私なりに書いていこうと思います。
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あらすじNYでストリップダンサーをしながら暮らす“アニー”ことアノーラは、職場のクラブでロシア人の御曹司、イヴァンと出会う。彼がロシアに帰るまでの7日間、1万5千ドルで“契約彼女”になったアニー。パーティーにショッピング、贅沢三昧の日々を過ごした二人は休暇の締めくくりにラスベガスの教会で衝動的に結婚!幸せ絶頂の二人だったが、息子が娼婦と結婚したと噂を聞いたロシアの両親は猛反対。結婚を阻止すべく、屈強な男たちを息子の邸宅へと送り込む。そこでアノーラはイヴァンとの幸せな新婚生活を邪魔されたくないと必死に抵抗するが…イヴァンもアノーラと一緒に抵抗してくれるのかと思いきやまさかの行動に!ほどなくして、イヴァンの両親がロシアから到着。シンデレラストーリーの終焉と“契約彼女”として最後に残るものとは?ハッピーエンドでは終わらない大人のラブストーリー。

うすべーに
そういえばこの映画ってアカデミー賞で話題になってた気がするんだけど?
3つのポイントで簡単に紹介してみますね!
3つのポイント
第77回カンヌ国際映画祭で最高賞にあたるパルムドールを受賞し、第97回アカデミー賞では計6部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞、編集賞の5部門を受賞しました。
いざ映画を見に行こうとしたらR18+とあったので正直な話、若干躊躇しました。普段は全年齢の映画がほとんどで過去に1度だけR15+を観たことがあり暴力的なシーンや性描写が描かれていたりしていたので、R18+はドキドキでした。
こちらの映画の主人公は娼婦ということで、オープニングからR18+要素は映画開始から30分ほど性描写が続いていきます。後半はR18+要素はほとんどなく、暴力的なシーンは屈強な男たちがアノーラとイヴァンの家にやってくる場面であったくらいでした。
R18+でないと、物語前半のイヴァンとアノーラの絡みを濃く表現することが物語の後半の喪失感&シンデレラストーリー終焉へと繋がっていくので必要な要素です。特にラストのアノーラとイゴールとの車の中でのシーンを考えると・・・(感想にて後述いたします)
映画館でエンドロールが終わり最初に思ったことは「あれそういえば今自分は映画を観ていたのか!」と笑。マイキー・マディソンの演技がリアルで迫真で魅力的でストーリーも相まって引き込まれていました。
娼婦としてイヴァンとの絡みで女性としての美しさを妖艶に演じ、屈強な男たちに抵抗する場面の迫真の演技(特にここが個人的に一番注目)、後半のイヴァンをトロスたちと探す場面ではコミカルな演技と表現の幅がとてもある方だなと驚きました。
感想
イヴァンは典型的なお金持ちの悪い方向に育った御曹司!最後の最後まで変わらずクズでしたね・・・
イヴァンはアノーラを振り向かせるために財力を使い契約彼女として一緒に過ごせるようになり目的達成、アノーラは最初はお金目当てだったけど彼と一緒に派手な遊びや生活をしていく中で愛が生まれ遂には結婚までし、同じ職場のストリップダンサーに勝ち誇った勝ち組として羨ましがられているところまでは完璧でした。
結婚して割とすぐの場面でロシアの両親からの結婚を阻止されそうになったときにアノーラは必死に両親と話し合い結婚を認めさせようと働きかけていたけど、イヴァンは全く頼りにならず両親の言いなりでアノーラのことを守ることは一切なし。イヴァンは両親から見捨てられると人生終了するというのは観ていて分かったので、そこからイヴァンがアノーラを守るために両親を説得し「愛の力でハッピーエンドに!」という未来は全く想像できないですが笑。最初から両親のことを話して財力を使わずに自分自身の魅力でアノーラにアプローチしていけば良かったのに…と一瞬思ったのですが、イヴァンの魅力ってなんだろう。
契約彼女としてイヴァンとの関係を7日間で終わらすことが出来ていればアノーラは幸せになったのかというと難しいですね。今までの生活からは想像もできないような派手な遊びを覚えてしまったあとでは元の生活には戻れないと思います。だったら結婚してしまえばずっと幸せな生活が続くと思うのも分かるような気がします。しかもイヴァンから求婚されているのでアノーラは断る理由が見つからないです。デメリットがその時点では無いですからね!
場面変わりまして、ロシアの両親から送られてきた部下トロスと屈強な2人組イゴールとガルニクか登場してからコメディ感が出てきて面白くなってきます。イヴァンが行方をくらましアノーラとトロスとイゴールとガルニク(以下、イヴァン捜索隊といいます)は片っ端からお店や友人の店に押し入って聞き込みをしていきます。その中でイゴールがアノーラに対して唯一優しく接していたところが終盤の見所だと思います。アノーラは最初はイヴァンの家で取っ組み合った人たちでイヴァンの敵なので反抗的で素っ気ない態度だったんですが、イヴァン捜査隊として一緒に長時間過ごしたことでイゴールに対してだけ優しさが見えたように思えます(例:寒いのを気遣い羽織るものを渡す場面など)。
そして、最後イヴァンとの結婚が解約されアノーラは結婚する前の生活へと戻っていきます。アノーラを荷物と一緒に彼女の自宅へ車でイゴールが届けるシーンでアノーラがイヴァンとの関係が終了したことを実感します。2人きりの車内でアノーラがイゴールに近づきお礼を伝える…が伝える方法が身体でのお礼。不器用なアノーラの精一杯の表現だが悲壮感がアノーラとイゴールを襲い、車のエンジン音とアノーラの泣く声のみが響いたまま物語の終幕。イゴールもアノーラに対して何をしてあげればよかったのか分からず固まってしまって不器用なところが見えました。
これから先アノーラは絶対に幸せになるとはいえませんが、前を向いて幸せを見つけてい欲しいなと思います。お金さえあれば幸せかというのは人それぞれですが、少なくともアノーラにとっては唯一手元に残った幸せの一部分だと。これから先は結婚に対してアノーラはかなり慎重になりそうです。もしもイヴァンが将来両親の力を借りずにお金持ちになってアノーラに再度求婚を申し込んだとしてもOKは難しいでしょう。シンデレラストーリーは童話の中だけで現実世界は幸せだけではない辛く悩ましく想像もつかないストーリーを歩んでいく。大人の階段を一歩のぼったような気持ちになるそんな映画でした!